明け方雨が降っているのが聞こえたが日曜の朝寝床で雨の音を聞くのはなかなか趣深いものがある。雨が降っていると洗濯しなくていいし出掛けなくていいし家で終わっているのが許されるような気がするがただの気のせいであり私は晴れの日も曇りの日も雨の日も嫌いだ。『
デクライン』という80年代初頭のLAパンクシーンを捉えたドキュメンタリー映画があるのだが、GERMSを始めBLACK FLAGやXなどLAパンクシーンの重要バンドたちのライブシーンやインタビューを中心として当時のむせかえるような濃厚すぎる空気感がビンビンに伝わる名作ドキュメンタリーなのだが(デクラインは三部作で二作目はパンクの後に流行ったLAメタルシーンを面白おかしく捉えたちょっぴり商業寄りの内容で三作目は90年代に入って空き家をスクワット(不法占拠)して住み着くガチの貧困アナーコパンクスたちのDIY精神溢れる自由かつ三部作中最も救いの無いめちゃくちゃ厳しい容赦ない現実が描写されていてつらいけどとても面白い。Litmus Greenというアナーコハードコアのバンドのライブシーンがめちゃくちゃかっこいい)、デクラインはバンドだけでなくライブに遊びに来ている普通の若者達にも等しくインタビューして話を聞いており、そのノーフューチャーな受け答えがやはりビンビンに濃厚な時代の空気を反映していて痺れる。そのデクライン一作目はGERMSのダービー・クラッシュのラリラリ・ライブの模様やペットのくそデカい蜘蛛(!)と戯れるヤバいシーンがあったりするのだが、しかし自分の心を捉えて離さないのはどんどんヤバいバンドが沢山出てきて盛り上がるLAパンクシーンにのめり込みライブに足を運ぶ若者のインタビューであった。まだ十代なのにめちゃくちゃ鋭い飢えた狼のような鋭い眼光をたたえたその少年は、インタビュアーである監督からの「今のLAで暮らしていることについてどう思うか」という質問に対してこう答える。「大人は嫌いだ……街も嫌いだ。空気も嫌いだ。バスも嫌いだ……何もかもが嫌いだ」映画館のリバイバル上映で観ていた私は「バスも嫌いだ」という言い回しに衝撃を受け、年端もいかない少年が抱えるヘイトフィーリングのあまりの巨大さ、根深さに舌を巻いたのをよく覚えている。ということで、ただの鬱病のサラリーマンである自分をその飢えた狼のような少年に重ね合わせるのもおこがましいのだが、最近の自分もずっとそんな感じである。生きていてもクソほども面白くないし、心落ち着く瞬間なんてない。ただ会社へ行き帰って寝るだけの肉人形である。生きていて喜びを感じるということが全くなくなってしまった。息を吸って動いたりそれにまつわる全てがストレスでしかないしじっとしていてもストレスなので一刻も早く精神病院に入院する必要を感じているが、休職が許されるような職場ではないし仕事辞めたら実家に帰らなくちゃいけないし実家がこの世で最もストレスフルな場所なので詰んでいるのである。閑話休題。自分の人生なんて何でもどうでもいいし特にやりたいことも好きなこともないので何でもいいのだが、この週末から鬱病の薬が切れていて薬なしで過ごしているのだがというかそれもこの土日の話だが、薬をいきなりやめると離脱症状というのが身体に起こってそれがとてもつらい。全身がフワフワして自律神経はぶっ壊れて変な汗を大量にかき何がなんだか分からなくなる。本題になかなか行けませんな。今日日曜日の天気予報は曇り時々雨だったが、昨日洗濯できなかったので今日洗濯しないと着る服がなくなってしまうことを恐れた私は雨が降らない方に賭けて洗濯機を回した。昨夜睡眠薬を飲んで何となくまとまった時間眠れた私はいつもの週末に比べると家事をする元気があったため、グレープフルーツを食べたり米を炊いたりしながらトイレを掃除したり爪を切ったりシャーワーを浴びたりできた。いつ買ったのか全く覚えていない卵をゆで卵にしてレトルトカレーと一緒に食べたりもした。なかなか本題に行けねー。洗濯機を回し終えた時は私はトイレ掃除を終え、爪を切り、シャーワーを浴び、カレーを食べていた。そして身体にまとわりつくような湿気と押し潰してくるような曇天の下ベランダで洗濯物を干し始めた私は、ベランダの向かいのマンションの屋上によくとまっているピョッピョッと鳴く雀でもカラスでもない鳥がつがいでベランダの目の前にある白樺の木にとまっているのを見たのである。こんな至近距離でその鳥を見たのは初めてだったのでいたく感動した。思わず笑みがこぼれたその刹那、つがいの二羽は戯れに近くの枝に何度か飛び移ったりしたあと、どこかへと飛び去っていった。鳥に感動しながら軽い手つきで洗濯物を干し終えた私はコーヒーが飲みたいなと思って近所のファミリーマートへ行くことを思いついた。洋服の洗濯を終えたら次は布団カバーとシーツを洗うのが吉。洗濯機をまた回して布団カバーを剥いだ中身(NASAの技術を使用した疑似羽毛が入っているらしい)と夏掛けをベランダの欄干に干してファミリーマートへ行くため家を出た。タバコを吸いながら歩いていると、近所を流れる川でよく見かける鴨が急に羽ばたいて、道路に上がってプリけつをフリフリしながら私の数メートル先を悠々と歩いているではないか!鴨がバリバリに飛ぶところを初めて見た私は興奮しながらそのプリけつの後をゆっくりとつけた。写真を何枚か撮った刹那、また大げさに羽根を広げた鴨はちょっと前までいた川の流れに身を任せ、ジャバジャバ~という涼しげな音をたてながら着水し、またいつもの用にのんびりと泳ぎ始めたのであった。私の後ろを歩いていた犬の散歩中のおばちゃんは、「鴨が飛ぶとこ初めて見たねえ」と私と全く同じことを言っていたのでそれを聞いてニコニコした。少しだけ心が軽くなるのを感じてファミリーマートでコーヒーを買って向こうから歩いてくる柴犬をガン見したりしていたのですがいきなり雨が降ってきてベランダに干しているNASAの技術を活かした疑似羽毛の入った布団を案じた私は急いで家に帰り濡れた布団を取り込んだ。それから色々あって五万年振りに部屋の掃除をしたり離脱症状に震えながら新宿へ行って野暮用を済ませたりした。とても疲れた。野暮用を終えた私は今フッドのチャイニーズレストランでこの冗長極まりない日記をスマホでポチポチ書いている。全てに興味を失って生きる喜びもクソも無い私だが、それでも私の好きな人たちが元気で少しでも幸せだったら良いと思っている。お前はバカか。