2016年12月30日金曜日

クロのこと

学生のころ、大学の最寄り駅のかなり僻地の私鉄沿線に住んでいた。駅前に青果店とタバコ屋と布団屋さんがあって、布団屋さんの店先に黒くて大きくてかわいい犬がいた。近所の小学生達から「クロ!クロ!」と呼ばれて親しまれていたその犬は、全身黒い毛で覆われていたけど四本の足が手袋をはめたように白かった。とても大人しくて利口な犬だった。当時JTのCHERRYというマイナーなタバコを好んで吸っていた自分は駅前のタバコ屋さんのおばさんに顔を覚えられ、行くたびにスッとCHERRYを出してくれるようになっていた。当時付き合っていた女の子を朝駅までチャリの二ケツで送っていったとき、駅前にいた良い感じのおっさんが自分らカップルを見て、「いいね~青春だね」と言って、嬉しいような恥ずかしいようなこそばゆい気持ちになった。そういうことが自分の人生にかつて確かにあった。

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